米雇用統計・今月の注目ポイント（2024年6月7日発表分）

2024年6月7日（金）、日本時間21時30分に米国で5月雇用統計が発表されます。
今後の為替動向を占う意味で注目度の高い米国雇用統計。今月の注目ポイントをお届けします。

今月の注目ポイント
「米利下げ時期の思惑を絡めた展開に」

ソニーフィナンシャルグループ　シニアアナリスト　石川久美子

足下の米国では、当初米連邦準備理事会（FRB）が想定していたようなペースでインフレが減速せず、利下げ開始時期が後ずれするとの思惑が交錯しています。

前回の米4月雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を下回り、失業率は悪化。平均時給も前月から減速しました。これを受け、米国にもインフレ減速の兆しかとの思惑からドル安が進行。この発表の前日未明に日本の政府・日銀による円買い・ドル売り介入と見られる動きですでに急落していたドル円は、この雇用統計の結果を受けて151円86銭まで一段安となりました。ただ、その後は切り返してきています。というのも、日米の金利差が開いている状態がまだ続くであろうとの思惑のためです。

5月14日（火）、パウエルFRB議長は「需要が十分に弱まるかどうか判断するには3ヶ月以上のデータが必要」と述べています。つまり、少なくとも8月半ばくらいまでは、各種データを確認する状態です。こうした中で発表される今回の5月雇用統計は、この結果そのもので利下げの時期が決定する決め手にはなりにくいものの、市場における「利下げ開始はいつなのか」という思惑を調整するうえでは非常に重要です。

雇用統計の結果が総じて「強い」と判断されれば、市場が利下げ開始時期の予想を後退させる中でドル高が進む公算です。ただ、その場合は本邦政府・日銀による介入などで値が荒れることもあり得ます。一方、総じて「弱い」と判断される結果の場合、利下げ開始の早期化を織り込む中で、ドル円は一旦売られるでしょう。もっとも、その場合は「そうはいっても日米金利差は開いている」として、売り一巡後にはドルが改めて買われる展開となりそうです。

プロフィール
石川久美子（いしかわくみこ）

商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から同社研究員として、外国為替相場について調査・分析を行う。2016年11月より現職。外国為替市場に関するレポート執筆の他、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」など多数のテレビやラジオ番組に出演し、金融市場の解説を行う。また、Xでの情報発信なども行っている。資源国・新興国通貨に強い。

米国雇用統計の主な指標の実績と予想

**非農業部門雇用者数変化**
発表年月	予想値	実績値	修正値
2024年6月	+18.0万人
2024年5月	+24.0万人	+17.5万人
2024年4月	+20.1万人	+30.3万人	+31.5万人

**失業率**
発表年月	予想値	実績値	修正値
2024年6月	3.9％
2024年5月	3.8％	3.9％
2024年4月	3.9％	3.8％	3.8％

出所：時事通信社（2024年5月31日（金）時点）

米国雇用統計とは
米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。非農業部門就業者数や失業率など労働市場の情勢を見る十数項目のデータが盛り込まれています。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するため、米国の景気動向を測るうえで重要な指標であり、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。

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